映画と街

これも少し前の話なのだが港北のセンター北に映画を観に行った。川崎か二子玉川とういう選択肢もあったのだが生にく観る予定の映画が馴染みのチネチッタでは演っていなく、二子は気軽にお茶がしづらい。二子のお茶は無くなったドトール派だったのだ。

 

港北に向かったのは映画館の割引が利くのが分かったのと久しぶりにセンター北付近の様子をみてみようと思ったのだった。距離的には近いのだが車が無く、バイクもバッテリーが切れたまま放置していて港北になかなか出かけなくなった。

 

センター北のある横浜市営地下鉄のブルーラインはあざみ野から新百合に延長するのが決まったみたいだが、あざみ野から座れなくなるのでありがたく無いと思っている横浜方面に通う田園都市線沿線の人は多いだろう。

 

市営地下鉄が宮前平付近を通るという計画は第三京浜の野川インター建設計画同様無くなったようだ。宮崎台付近は地下に貨物線が通っていて、さらにそのはるか下をリニアが通過する予定、すでにトンネルがあるのだろうか。みな通りすぎるばかりなんです。しかしこれらが宮崎台付近に割とほのぼのした雰囲気をもたらしている一つの要因だろうか。夜に寝ていると地下の貨物列車の音がかすかに聞こえることがある。

 

センター北には宮崎台駅からは田園都市線に乗り、あざみ野で横浜市営地下鉄に乗り換えで時間もかかるし割高なのだが行きはそのルートを使い、帰りはウォーキングがてら歩いてみることにした。

余裕を持って出たつもりが時間ギリギリにセンター北に着く、近いつもりがやはり時間がかかる。急いでおしゃれな複合施設ヨツバコを通り映画館のあるノースポートへ。窓口で割引提示し、慎重に席を選びトイレに行く。

 

モギリの若い女性が前の二人連れに愛想が良かったので、僕も笑顔でお願いしますとチケットを渡すとなぜか物凄く冷めた様子でチケットを切り渡してくれた。でも分かる、逆をやりたくなる。こういう場面で物欲しそうにしては駄目なのだ。

 

観た映画は『ジョーカー』。ゴッサムシティが舞台。ゴッついサムい街という連想は『バットマン・リターンズ』の印象だろうか。席取りが珍しく上手く行って鑑賞状況に不快なところは無い、騒いで入って来た高校生の集団も大人しく観てるようだった。

映画はやはり『タクシードライバー』や『キングオブコメディ』を思い起こさせる。それらの主人公デ・ニーロが助演で出てもいる。スコセッシ映画だけじゃない過去の映画のオマージュやバットマンシリーズへの目配せもあって嫌でも文脈を読まされるところがある。この辺りからこの映画を語ってる評論も多そう。

 

アーサー(ジョーカー)が同じビルの住民のシングルマザーを妄想で恋人だと思い込む描写はよく描かれてる。考えようによっては実際の恋愛もそれぞれが別にみる妄想に近いものかも知れない。観ている者が過去のゴッサムシティへ迷い込むような描き方も成功してる、俯瞰ショットの適度な使い方がいいのだろうか。

 

反面暴動やデモが主人公の不幸と安易に重ねられすぎだと感じた。またデトロイト暴動とブラックブロックやアノニマス、アラブの春が少し安易に混ぜ合わされているようにも感じる、そこに洞察や現代性があればもっと良かっただろうかと感じるのは、この映画が作られたあとの黄色いベスト運動と香港デモで現代のリアリティを見てしまったからだろうか。しかし全て妄想とも取れる作りなので怒りの表現が殺人(殺人衝動)になってしまうジョーカーが観たデモ、暴動という捉え方も出来る。

 

寒いギャグをもう少し長く見せて欲しいとも思った、笑えるか笑えないか微妙な寒いギャグを。そこに限らずそのあとが観たいというところが何箇所かあった。それらと別に身体が硬くなっているアーサーとお母さんに整体、特に脳脊髄液調整をしてみたいと少し考える。

主演のホアキン・フェニックスはアカデミー賞主演男優賞を、別のスコセッシの作品で主演男優賞にノミネートされそうなデ・ニーロと争ったりするのだろうか。この作品の成功やゴッサムシティドラマの製作の流れでバッドマンシリーズの新作に期待が集まるだろうけど、監督はトッド・フィリップスとノーランどちらがやるんだろうか。最近のスターウォーズ・シリーズのように色々?それならまたティム・バートンにも少ないチャンスがあるかも知れない。バットマン役も気になりますね。

 

実際のホアキンとデ・ニーロ共演はなかなか良かったが、同じ時代の二人のフィクション上の登場人物が西と東に居たと妄想するのもこの映画の成り立ちに相応しいかも知れない。ホアキンの演ずる『インヒアレント・ヴァイス』のヒッピー探偵が何かのはずみでニューヨークに来て、『ミーン・ストリート』の青年に遭遇するってどんな話?

映画を観終わって同ビルのサンマルクでお茶したあと港北の様子をみて歩いた。サンマルクの奥の席は眺めがなかなか良かった。

 

同フロアにはロピアとブックオフが、これはいつもの近所の散歩コースかと少し感じながらやはり見て回る。持ってないアルマンドのCDを安価で見つけるがBPMが速そうな時期のもので整体に使えなさそうなので購入をやめる。

 

中古店はプレミア横浜にも「ワンダーランド」というリサイクルショップが入っていたのだけど誰もスタッフが居なく薄暗い倉庫状態、お店の人は多分休憩中なのだろう。でも古物は好きなので勝手に見ていいのだろうかと思いながら薄暗い中をしばらくみて回る。専門店街も一通り見て回った。

 

港北ではだいたい行く気楽なインド料理屋「ダルバル」でカレーとナンを食べようか迷ったが、お茶の際にパンを食べてしまいお腹が空かない。港北はやはり店が多いがデパートと専門店は前に来た時より苦戦してそうな印象も受けた、平日で曇天だったからだろうか。「ワンダーランド」が薄暗くその上の2フロアが改装中だったせいでそんな印象を受けたのかも知れない。

 

映画も明るくは無かったのでその影響もあるだろうか、それは最近あんまり関係なさそうなのだが少しは高倉健になっていたのかも知れない。ヨツバコに戻り「3rd」という無垢材の家具屋で椅子をみる。ここの椅子はすごくいいし店員の方も感じがいいのだが買うにはちょっと勇気のいる値段、北欧の人は初給料で椅子を買うというが。

 

港北にバットマンやジョーカーが現れるのは想像出来ない、バードマンならありだろうか。アーサーのような人は居るかも知れない。

 

そうこうしてるうちに雨が降って来て歩いて帰れなくなってしまった。調べると鷺沼までバスが出てるのでそれで帰ることに。窓に当たる雨を観ながらモギリの女性の対応は今日の映画に相応しかったなと考えた。鷺沼に着いても雨が降って居たのでドトールにもマックにもニューヨークコーヒーにも寄らず電車に乗る、歩けなかったのと久しぶりに人工的な空間をやや急いで回ったせいで身体に力が入っていたのか家に帰ると少し首と肩が凝っていた。