コミック2020

年度が変わったので本棚の本を入れ替えました。迷ったのですが今回は漫画です。

昨年の年末に民放で放映されていた、大会形式の番組「M1グランプリ」で優勝かなと思いきや一票も入ってなかった漫才コンビのペコパが「何その漫画みたいな展開!っていうけどでもその漫画って一体何?」という内省的なツッコミをしていましたが、「漫画ばかり読んでたら馬鹿になる」というような言説が通用しないような漫画はやはりあります。

選んだのはほとんど日本の漫画です。言語とコマとコマの組み合わせでの空間の設計と動きを想像させる表現の奥行きは他の地域ではあまり見られないものです。

ペコパが「何その漫画みたいな展開」と言ったところにかけていうと唐突な場面展開だけでなく、続きのコマや視点の変更による動きの表現というのも漫画の特色でしょうか。

漫画はコマつまり映画でいうところのフレームですが組み合わせによってショットのようなものを読者に想像させるということです。想像だとつなぎがシームレスなのである部分映画やアニメより自由なところもあるかも知れません。

コマ一つの中での動きの表現もありますね。手塚治虫氏や鳥山明氏の漫画は動線や残像表現で1コマだけでもかなり動いているように感じます。こういう線です→川三回。

 

これらに吹き出しやナレーションやモノローグ、効果音の言語表現が組み合わさったものが漫画だと言えるでしょうか。

選んだのは近年の作家の漫画でこの表現の続きが読みたいなと思ったものが中心です。最近刊行されたもので選んだものがベテランの花輪和一氏と斎藤なずな氏です。もっと新しいものを選びたかったのですがいいものが見つからなかったので文庫で巨匠の作品と大きめの海外の作品も加えました。※


静物画のようで動きが感じられないアメリカのニック・ドルナソの『サブリナ』のテーマ選びと現代性は面白いと思います。この漫画をフランスの哲学者ドゥルーズがいう時間イメージのようなものと捉える人がいるかも知れません。

それもあるかも知れませんがシステムに捕らえられた人間のパターン化した動きとミニマルなコマの連続が作品にマッチしているように思われます。ロイ・アンダーソンの悲惨なユーモア映画に、ネットの負の側面がテーマとして加わったような漫画作品と言えますでしょうか。ここでは陰謀論が扱われています。

選ぶにあたって同時に読んだら面白いかもと思い選んだものもあります。

斎藤なずな『夕暮れへ』、秋山さやか『サザンウィンドウ・サザンドア』がその一つです。どちらも郊外の団地を舞台にしています。千の窓の一つが『夕暮れへ』という感じでしょうか。それなら高野文子は『黄色い本』より団地が舞台の漫画が入っている『棒がいっぽん』を選ぶべきだったかも知れません。南Q太の『オリベ』と対だと『るきさん』でしょうか。

ニューヨークが舞台の『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』と『シティ・オブ・グラス』。これらは全く別のニューヨークの捉えかた、描き方です。

今回もセレクト本(アンソロジー)もセレクトしておきました。『コミック1970』『コミック1971』というのがそれです。

今回も漫画も非営利の貸し出し可能なので家で読みたい方はどうぞお持ちください。当日に整体受けなくても当店の会員に入っていただければ貸し出し可能です。

 

『鶏のプラム煮』 マルジャン・サトラピ
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』ジュリー・デュウシェー
『サブリナ』ニック・ドルナソ
『ブラック・ホール』チャールズ・バーンズ
『シティ・オブ・グラス』デビッド・マッズケリ
『ガキ』畑中純
『オリベ』南Q太
『こんちゅう稼業』秋山亜由子
『運命の鳥』高橋留美子
『盆堀さん』いましろたかし
『みずほ草紙』花輪和一
『泡日』高浜寛
『夕暮れへ』斎藤なずな
『サザンウィンドウ・サザンドア』石山さやか
『南瓜とマヨネーズ』魚喃キリコ
『黄色い本』高野文子
『秋の日は釣瓶落とし』岡崎京子
『雑草物語』大島弓子
『汐の声』山岸凉子
『赤い雪』勝又進
『花散る里』近藤ようこ
『のんのんばあとオレ』水木しげる
『愛の奇蹟』楳図かずお
『オトナな石ノ森』石ノ森章太郎
『空気の底』手塚治虫
『赤色エレジー』林静一
『メフィスト惨歌』藤子・F・不二雄
『義男の青春・別離』つげ義春

 

『コミック1970』
「アトムの最後」手塚治虫、「大海賊ハーロック」松本零士、「ホモホモ7」みなもと太郎 、「ダメおやじ」古谷三敏、「ヤスジのじゃる気あんのか劇場」谷岡ヤスジ、「銭ゲバ」ジョージ秋山、「男と女の部屋」上村一夫、「蔵六の奇病」日野日出志、「帆のないヨット」辰巳ヨシヒロ、「蟹」つげ義春、「くだんのはは」石森章太郎 、「1970」畑中純
 

『コミック1971』

石ノ森章太郎「仮面ライダー」、 永井豪「くずれる」 、手塚治虫「巨人と玩具」、 赤塚不二夫「天才バカボンのおやじ」、 あすなひろし「寒いから早く殺して」、 松本零士「男おいどん」、 つのだじろう「なぜオトコがオンナにおごらなければいけないのか?」、 山松ゆうきち「雨にむせびなくぱんてぃ」、 安部慎一「背中」 、村野守美「言葉のない部屋」、 水木しげる「偶然の神秘」、 影丸譲也「1971」

 

なぜか大島弓子氏の同じ本がニ冊入っていたのにあとで気がつきました。猫の漫画以外もまた書いて欲しいという願望がそうさせたのでしょうか。漫画は貸し出しがあったので空いたスペースに以下の漫画を入れました。
『カムイ外伝 壱』白土三平

『劇画漂流(上)(下)』辰巳 ヨシヒロ
『白い夢』山田勇男

『心臓』奥田亜紀子

『A子さんの恋人 1巻』近藤 聡乃
『ものするひと 1巻』オカヤ イヅミ
※比較的新しい世代の作品や一冊で完結してない漫画も加えました。