映画『いとみち』

横浜聡子監督の青森が舞台の映画『いとみち』を観るため久しぶりにセンター北のノースポートのイオンシネマに行った。
あざみ野で田園都市線から市営地下鉄ブルーラインに乗り換えセンター北駅に到着するが、ノースポートはコロナのためか全館10:00からしか開かないようで、動かないエレベーターB2の入り口付近で映画館の空き待ちと思われる人たちが待っている。せっかく早めに来たのに映画館に入れない。乗り場前は人が多く暑そうだったので、少しだけ風が通る建物の入り口付近でモールが開くのを待った。

10:00になってエレベーターが動き始めたようなので、乗り場に向かい人が殺到している何個か目のエレベーターに乗り込み上階のイオンシネマに到着するが、先にトイレを済ませて出たら券売機の前に列が出来ていた。10:10の回だったので焦って券売機以外の券の買い方はないかと画策し、わかばカード割引だと窓口で販売してくれるかどうかをアナウンスをしていたマネージャーらしき人に聞いてみるが、今日は1,100円の日だから駄目だとのこと。安いけど困った!

急いで密になってる列の最後尾に並ぶ。予告には間に合いそうに無い。近くに居た別の係の人に開場を少し早く出来ないのかと聞いてみるが、ノースポート全体の決め事みたいで駄目だとのこと。なんか聞いたお兄さんにちょっとキツく当たり気味になり申し訳なかったような感じになってしまう。他の人には僕はイライラしている客に見えていたに違いない。案内スタッフのお兄さんは困ったという感じで、駐車場側のエレベーターは24時間動いてるので、そちらだと少しは早めに入れることを教えてくれた。お兄さんごめん。映画館は早めに来る人が多数派なのでノースポート、イオンの責任者の方は映画館だけ少し早めに開場するのはいかがでしょうか。

そんなこんなで遅刻覚悟で劇場に入ったのは10:20過ぎだったが、まだ最後の方の予告をやっていてギリギリ間に合う。劇場内は結構混んでいた。コロナ対策で席を一つづつ開けるために、イオンシネマではリトル・マーメイドの絵が書かれた厚紙が全てのブランク座席にくくりつけられてあった。座席に座る際にスクリーン側から後ろを見るとリトルマーメイドと、全員マスクをした観客が交互に並んでいてスクリーンの反射光に照らされていた。僕もその絵の一部になる。少し迷って選んだ座席は快適で映画も面白かった。

横浜監督の映画にはやはり空間と人間の捉え方にハッとさせられるところがある。列車がりんごの木々を縫って走るシーンと、登場人物のバストショットの向こうに海の水がいろんな方向に流れ波打ってるショットが特に凄かった。物語の方も良くて日常や世界を誇張せずに描き切っていた。主人公も他の登場人物も場面によりいろんな表情と顔を見せる。映画のために無理に色んなところをエモーショナルにしていないところが良い。近年は作品のために無理にエモさを出しているものもあって、それはやはり映画では冷めてしまう。世界や歴史や人間を描くのに必然があってならいいのだが。

主人公はメイド喫茶でバイトし始めるのだが、そのもう一つの場所から滞っていた何かが動き出す。そのメイド喫茶で主人公に痴漢をし、さらに悪態をつくお客がいた。痴漢、悪態とまではいかないが、その日の僕は映画の登場人物の中ではこれに近いかもと思いながら観ていた。映画では開場と来場も重要な要素として描かれていてそこもカブっていた。

店だと迎える人と訪れる人が居る。家だと迎える人と帰る人だ。送り出す人と出かける人というのもある。誰も待ってない人も、家がない人も居るでしょうが。家に帰りたくないというのや、帰って来て欲しくないというのもあるだろうか。映画では見送るかと思いきや、外で頭冷やしてこいと追い出すという場面もあって面白かった。お帰りなさいませご主人さま(主人公は訛って「おがえりなさいまし、ごすずんさま」)と挨拶するメイド喫茶は客の家の設定だということに初めて気がつく。映画自体にこの外から内に、内から外にという視点の変化が描かれていてそれに気がついたのだろうか。

この映画では芸は身を助くということも描かれるが、それを必ず無くてはならないものとして描くということも避けられていたと思う。主人公いとに学校で出来る友人によってもそれは相対化されていた。しかし多面的に物事を見られる事がこの友人の芸だということも出来るかもしれない。出来ることはやった方がいいと友人にも押され、いとは中断してた祖母に習った三味線を公にやることにする。それは夢に出てきた亡くなった母と繋がることでもあるだろうか。

オーナーの不祥事で傾いたメイド喫茶はどうなるか分からないが、スタッフはいいメンツが揃い互助的な要素も出てきていて、人を迎える心持ちも出来ているので、うまく行って欲しいものだ。

映画が終わるとインドカレーを食べると決めていた。映画が終わってノースポートにもインドカレー屋があるのに気がついたが、モザイクモール港北/都筑阪急の5Fの観覧車乗り場近くの馴染みのダルバルに行く。店内はクーラーが効いていたが、スコール前の異様な蒸し暑さで汗をかきながら食べた。ラッシーをサービスで2杯出していただき助かる。

そのあと地下鉄グリーンラインに乗って日吉まで出た。グリーンライン各駅の入り口は散歩などで見かけていたのだけど乗るのは初めて。初めて乗る路線で映画のことを考え、またいつか青森を訪れたいなとも思った。